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二重課税と留保金課税


会社の所得には法人所得税が課せられますが、この税引き後所得を個人株主に配当するとさらに個人所得税が課せられてしまいます。これは二重課税といわれるものですが、配当を行わなければ個人単位での再度の課税は回避できます。ただし、配当を行わなくても留保金に対して課税を受ける場合があります

二重課税 (Double Taxation)

社形態で事業を行うことのデメリットのひとつは、「ある事業所得に対して税金が2重に課せられる」ことです。

例をあげてみます。いまAさんが会社(A Trade,Inc.)を設立して事業を行い、10,000ドルの利益をあげたとします。このとき法人税率を35%とするとA Trade,Inc.は法人所得税3,500ドルを納付しなければなりません。さらに、税引き後の6,500ドルを全額株主のAさんに配当した場合、配当金はAさん個人の所得になり個人所得税の対象となってしまいます。仮に個人所得税率を30%だとすると個人所得税が1,950ドル課せられることになります。整理すると以下の通りです。

A Trade, Inc.の所得 10,000
法人税 3,500
税引後所得(=配当額) 6,500
Aさんの個人所得税 1,950
Aさんの手元に残った所得 4,550

実に半分以上が税金で持っていかれています。このように会社レベルで課税され、さらに個人レベルで再度課税されることを二重課税(Double Taxation)と呼びます。

この二重課税はどのように回避できるのでしょうか。ひとつの方法は配当を行わず会社に留保しておくことです。会社に利益を留保し、会社の事業拡大のための資金にまわすのです。配当をしない限りAさんの個人レベルでの所得は発生せず、したがって個人所得税も課せられないということになります。

しかし、税務当局の立場からすると、これを野放しにすれば、必要以上に会社に利益を留保することで課税を回避されてしまいます。そこで、そのような課税回避を許さないために、以下の留保金課税(Accumulated Ernings Tax)及びパーソナル・ホールディング・カンパニー(Personal Holding Company Tax)の制度が設けられています。なお、これらはいずれも一定の要件を満たす場合に留保している利益に対して課税を行うものです。

留保利益に対する課税制度

1.留保金課税(Accumulated Ernings Tax)

これは、会社事業のために必要もないのに利益を留保している場合、それを課税の回避行為とみなして、留保利益に対して39.6%の課税を行うというものです。「事業のために必要である」ということは会社が立証する必要があります。従って、例えば事業の拡張計画があり手元資金が必要である、といったような主張を行い税務当局を納得させる必要があるのです。なお、原則的に留保利益が250,000ドル以内であれば、事業のために必要な留保とみなされることになっています。従って、その金額を超えて留保する場合は、上記のような主張を行うための準備(例:拡張計画の策定等)が必要となります。

2.パーソナル・ホールディング・カンパニー課税(Personal Holding Company Tax)

これは、少人数の個人株主によって所有されている会社(50%超を5人以下で所有している会社)で、その所得の60%以上が配当、利息、賃貸料あるいはロイヤルティで占められている会社(これをパーソナル・ホールディング・カンパニーと呼ぶ)について、その留保利益に対して38.6%(2002から)の課税を行うというものです。これは、昔個人所得税の最高税率が法人税率よりも40ポイント以上も高かった時代に、資産家が高税率を回避するため会社に資産保有させ、その利益を会社に蓄積することへのペナルティーとして設けられた税制です。現在では、法人と個人の所得税率にそのような差異がないもののこの税制自体はまだ存続しています。なお、パーソナル・ホールディング・カンパニー課税が課せられた場合は、(当然ですが)1の留保金課税の対象からははずれます。




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